自分の行動は、非合理的な習慣にすぎない!?


ほんとうに「自己決定」している?

さて、やっと最後になりました。「自己決定」です。「自己決定」も持続的幸福のために必要なものでした。

会社を辞めたら食べていけない。私はそう思って会社に行きましたが、これは「自己決定」しているといえるでしょうか。鎖につながれて、無理やり連れていかれている感じがしていましたが(笑)。

無意識に動いている?

「腕を動かしてみてください」。ベン・リベットという神経科学者が行った実験です。すると、被験者が腕を動かそうという気持ちになる前に、脳の活動量が増加したそうです。

リベットは、これを次のように解釈しました。まず、脳が腕を動かすことを決定する。そして、脳の決定が行われた後に、被験者が、この決定を認識する(腕を動かそうと思う)。つまり、その人は、腕を動かそうと思って動かしたのではない。無意識(に行われる脳の決定)だというのです。

本当に「自己決定」?

また、池谷裕二さんの「脳には妙なクセがある」に、興味深い実験が紹介されています。

目の前の物を指さしてください、とお願いします。すると、右利きの人は右指でさすことが多い。そこで次に、「左右どちらかで指してください」とお願いすると、右指の使用率は60%に下がるそうです。

次に、この実験の最中に、右脳を磁気刺激すると、右で指す率が60%から20%に落ち、左手を多く使うようになったそうです。しかも、当人は、あくまでも「自分の意志で左手を選んだ」と言うのだそうです。

「こうした実験からわかるのは、自由意志とは本人の錯覚にすぎず、実際の行動の大部分は環境や刺激によって、あるいは普段の習慣によって決まっているということです」。

習慣に基づく行動は、非合理的な場合が多い。

その理由は、昨日の投稿でご紹介しました。習慣の多くが、目先の満足を得ようとして形成されるから。食べる、身を守る、子孫を残すという衝動に関係しているからでした。

池谷さんの同書に興味深い研究が紹介されています。

元金が保証されるが、利益の低い投資。多少のリスクはあるが利益の高い投資。長い目で見れば後者が正しい選択でも、一般に前者が選ばれる傾向があるそうです。

それは脳には、「損失に対する嫌悪」が強いという性質があるから。とくに、手にできる公算の高い金や食物を失うことに対して、脳は敏感に反応するといいます。結果として、目先のリスクを避けるあまり、最終的に損をすることも珍しくないとか。

ただし、適切なアドバイスを受けた場合には、目前のリスクへの過度な嫌悪感が緩和され、正しい選択がされることが分かったそうです。

行動の80%以上が習慣に従っている

ノースイースタン大学のバラバシ博士らの研究によると、携帯電話の使用履歴から、「ある人が今どこにいるか」を2か所程度に絞ることができるそうです。

「つまり、私たちの行動は、80%以上はお決まりの習慣に従っています」。「意識上では自由に行動しているつもりであっても、現実には、本人でさえ自覚できないような行動のクセがあって、知らず知らずに、活動パターンが常同化しています」。反射的にワンパターンな行動をしているということらしいのです。

感想

持続的幸福のためには「自己決定」することが必要。とはいっても、自己決定したと自分では思っていても、ほとんどが単なる反射で、それが非合理的だとしたら。幸福などおぼつかない気がします(笑)。

普段とは違うことをしてみると、運がよくなる。たとえば、会社に行く道を変えてみる。そんな小さなことでもいい。リチャード・ワイズマン(心理学者)の「運のいい人にはワケがある」という本で、以前読みました。

どうして普段と違うことをすると、運がよくなるの?そのときは、いかがわしいと思いました(笑)。でも、それは非合理的な習慣を変えてみよう、ということだったのかもしれません。

では、非合理的な習慣を打破するためには、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか?人の習慣は、食べる、身を守る、子孫を残すという衝動から形成されているといいます。そうだとすれば、そうした生存本能とは異なる部分にヒントがあるのかもしれません。

いずれにしても、意識的な努力が必要になりそうです。「すごく幸せになろうと思えば、それだけ幸せになれる。人は、そうなろうと決めた分だけ幸せになれる」。この名言が正しいような気がします。

参考:
池谷裕二「脳には妙なクセがある」
Seth Schwartz Ph.D. 「Do We Have Free Will?」

 


hidenorin
翻訳者。早稲田大学商学部卒業。名城大学大学院法務研究科(法学既修者コース)2016年修了。 全国珠算教育連盟珠算検定試験1級。TOEIC940。 趣味は読書、水泳、写真撮影です。

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