人生の意味をみつける。 その4


仕事に意義を見出すには。

 

人生に意味・目的はあるか。この疑問に対して、人生(生まれてきたこと)に意味・目的はあると、肯定説に立ちました。たしかに、「人生に意味・目的がある」ことを証明するのは不可能です。しかし、このように考えた方が、より意味のある、幸福な人生を送れる可能性は高くなるに違いありません。一つには、人生の意味を探っていく過程で、幸福が選択するものであることに気づくからです。

 

とはいっても、毎日サービス残業で、帰宅するのは深夜。残業時間は月に100時間以上、しかも職場ではガチガチに管理されるというのでは、人生の意味どころではないかもしれません。仕事は人生で大きなウエイトを占めます。1日の3分の1くらいは、職場で過ごすからです。ですから、何とかして仕事に意義を見出したい。では、仕事に意義を見出すためには、どうしたらいいのでしょうか。

 

「奉仕と愛」を実践する。コンパッション(思いやり・慈しみ)を実践する。

 

メイヨー医科大学のアミット・スード博士によると、①私たちは、「奉仕と愛」の使者です。コンパッション(思いやり・慈しみ)の実践者です。②私たちがここにいるのは、世界をより幸せな場所、より思いやり深い場所とするためです。そして、③この世界は、大きな学校です。学習の場です。同博士によると、仕事に意義を見出すためには、仕事でこれを実践するということになります。

 

コンパッションの実践は、誤解されやすいかもしれません。

 

蛇足ですが、この原則を実践しようとすると、おそらく「偽善」だという評価を受けると思います。面と向かって言われなくても、陰でそう言われるかもしれません。しかし、この原則を実践する目的は、自分がより幸福に生きるため、あるいは、生産性を高めるためです。ですから、「偽善」という評価は、少しポイントがずれています。正しいから、善いからという観点で、しているのではないですから。「偽善」という評価は、無視すればいいでしょう。

 

ただし、職場で上記の原則を実践しようとすると、他者から利用されることがあるかもしれません。そうした場合には、相手の提案・申出等を拒否すればいいのではないでしょうか(笑)。正しいから・善いからという理由ですると、こうしたときに拒否し難くなってしまいます(笑)。

 

仕事で関係する人たちは、全員自分の家族だと思う。

 

アミット・スード博士は、このように言います。「仕事で関係する人たちは、全員自分の家族だと思いましょう」。自分の家族だと思えば、つながりが生まれ、コンパッション(思いやり)が生まれます。そして、コンパッション(思いやり)は、良心の働きを助けます。結果として、注意力や能力が向上するのだそうです。アミット博士は、思いやり深いが能力を欠くという人を見たことがないといいます。

 

思いやりの心を育てれば、能力が向上する!?

 

思いやりの心を育てるようにすれば、能力(コンピテンス)向上への道を歩むことになるのだそうです。「仕事で関係する人たちは、全員自分の家族だと思いましょう」。この原則を自分の毎日に適用できそうですか。以下の質問に答えてみてください。

 

・私の仕事は、本質的にどのようなものだろうか。
・私の仕事は、誰の役に立つのか。
・顧客を家族だと思えるだろうか。どんな関係が考えられるだろうか。
・仕事を通じて家族を助けるのだと考えた場合、こう考えることにより仕事の質が改善するだろうか。どのように改善するのか。また、なぜ改善するのか。

 

自分の子どもや孫が、あなたの作った製品を使うのだと思って、創造や革新を行ってください。ミツバチやアリが小さな脳でこうした考えを実行できるのですから、私たちにも必ずできます。このように考えれば、よりよい製品を創るのに役立ちます。ただ人目を惹き、金銭と成功をもたらすだけの製品ではなく、本当に意義があるもので、世界をより思いやり深く、幸せな場所とする製品を創ることができるでしょう。

 

評価を気にしない

 

どんな職場にも、上手に立ち回る人がいるものです。そうした人は、どうしたら評価されるかを分かっています。たしかに、そうした人が成功を手にすることはありますが、大成功するまではいかないのです。評価されようとすると、かえって最高位には行きにくくなるという研究があります。

また、別の研究によると、最高のリーダーは、情熱と謙虚さをあわせ持っています。最高のリーダーは、目立とうとしません。デザインの完成、顧客へのサービスといったプロセスが報酬だと考え、成功や名声といったものを動機付けとしません。もし、あなたが他者のために楽しく仕事をして、誰が評価されるかということを考えなければ、仕事を楽しむことができるでしょう。

 

謙虚さを身につける。

 

謙虚さという言葉は、誤解されていることが多いのだそうです。以下のどれが、謙虚さを正しく言い表していると思いますか。

 

・謙虚さとは、他者に踏みつけられること。
・正確な自己理解をもつこと(自分の強みと弱点を知っていること)。
・自尊感情を小さくすること。
・新しい考え方を受け入れること。
・自己否定を実践すること。
・自分と他者の必要とのバランスをとること。

 

謙虚であるとは、自己注目(セルフ・フォーカス)を少なくすること。自分のことを考えるのを、少なくすること。

 

正確な自己理解をもつこと、新しい考え方を受け入れること、自分と他者の必要とのバランスをとること。これらを選べば正解だそうです。謙虚さとは、自己注目(セルフ・フォーカス。自分自身のことを考えること)を少なくすることであって、自尊感情・自尊心を低くすることではないといいます。謙虚さは、強さの表れであり、弱さではありません。

 

謙虚であることの効能

1 謙虚だと自由になれる。

 

謙虚であれば、自分自身のイメージを膨らませて、それを維持するという重荷を背負う必要はありません。謙虚さの反対は、自己愛的であることです。ナルシストは、自己感が損なわれており、いつも自分自身を守っています。

 

2 謙虚と、そのいとこである思いやりは、人に伝染する。

 

あなたが謙虚で思いやり深いと、人々は、あなたの側にいると心地よくなります。自我を守る必要はないと気づきます。自我を傷つけられることはないと感じるからです。すると、あなたと一緒にいるとき、他の人も謙虚で、思いやり深くなります。

 

3 謙虚になると成功に近づく。

 

「自己理解」(セルフ・アウェアネス。自分自身への理解を深めていくこと)と「他者理解」、「セルフ・コンパッション」(自分自身に対する思いやり・慈しみ)と「コンパッション」(他者に対する思いやり・慈しみ)は、心の知能(EI)の4つのカギとなる要素だそうです。真に謙虚な人は、この4つの要素の全てをもっているとか。研究によると、キャリア・サクセス(仕事における成功度)は、心の知能(つまりは謙虚さ)と密接な相関性があるそうです。

 

謙虚になるためのアイデア

 

では、どうしたらより謙虚になれるのでしょうか。それについては、次のようなアイデアがあるといいます。

 

・自分自身の強みと弱みを知る。それを受容する。
・批判を受け入れる。自分は生涯を通して学習者なのだと考える。人生の学校に入学し、そしてそこで常に学び続ける。
・他者の考え方をよく聴き、完全に理解しようと努める。
・他者の必要や希望を考慮する。
・自分を信じてくれた人を信じる。

 

とくに最後の点が、最も重要だそうです。謙虚さは、ありのままの自分を認める心から生まれます。そして、ありのままの自分を認める心は、自分がありのままで愛され、受け入れられているという確信から生じます。理想を言えば、配偶者やパートナー、両親、兄弟、友人、同僚、先生、隣人、世界中のあらゆる人から愛され、受け入れられたいと思います。

しかし、ある人たちから愛されず、受け入れられない場合には、自分を愛し、受け入れてくれる人に、より意識を集中しましょう。脳のなかの貴重な部屋を、自分に対して思いやりがあり、意味・目的のある人に貸すのです。

 

仕事に楽しさを見出す

 

私たちは毎日、映画や劇場、ダンスの独演会、野球の試合といった娯楽に対して、お金を払います。では、仕事についても娯楽にすることができないでしょうか。

 

ある日、定期的に給料をもらう必要がなくなったと想像してみてください。そうしたら、仕事を続けますか。お金の問題が全くない(使い切れないほどの莫大なお金が入った)としたら、あなたは何をしますか。その場合にすることが今していることと同じか、似たようなことならば、最もよい仕事をしているといえるでしょう。

 

理想的な仕事には、7つの特徴があるといいます。
・自分の強み、スキル、能力を最大限に発揮できる仕事
・自分の成長につながる仕事
・人生にプラスの意味・目的を与えてくれる仕事
・それなりの収入になる仕事
・結果が予想できる仕事
・自由裁量が与えられている仕事
・ありのままの自分を尊重してくれる仕事

 

しかし、理想と現実が異なる場合も少なくないと思います。ただ、どんな仕事をしているとしても、自分の今している仕事には、より高次の意味・意義がある。それを認識しておくことが大切だそうです。

 

自分の仕事を、より大きな世界と結びつけてみましょう。上記の7つの特徴で示した観点から、自分の仕事を家族、会社、コミュニティ、国、全世界と結びつけてみてください。自分の仕事により大きな意義を見いだせるか。以下の質問に対する答えを書いてみてください。

 

・私の仕事は、家族に対して、どのように役立っているか。
・私の仕事は、会社に対して、どのように役立っているか。
・私の仕事は、コミュニティに対して、どのように役立っているか。
・私の仕事は、国に対して、どのように役立っているか。
・私の仕事は、全世界に対して、どのように役立っているか。

 

自分の仕事に対して明るい未来を描けないときには、このより高次の意味について考えてみてください。ネガティブな考えの堂々巡りから、抜け出せるかもしれません。また、自分の仕事の精神的側面に気づく助けとなるかもしれません。

 

感想

 

セルフ・コンパッションとコンパッションは、心の知能の重要な要素。そして、キャリア・サクセス(仕事における成功度)は、心の知能(謙虚さ)と密接な関連性がある。すると、セルフ・コンパッションやコンパッションも、仕事における成功度に何らかの関連があるといえそうです。

 

そこで、今後は、セルフ・コンパッション(自分に対する思いやり・慈しみ)とコンパッション(他者に対する思いやり・慈しみ)の実践方法に重点を置いて、ご紹介していこうと思っています。

 

 

参考:Amit Sood, M.D. 「The Mayo Clinic Handbook for Happiness」

 


hidenorin
翻訳者。早稲田大学商学部卒業。名城大学大学院法務研究科(法学既修者コース)2016年修了。 全国珠算教育連盟珠算検定試験1級。TOEIC940。 趣味は読書、水泳、写真撮影です。

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