ポジティブシンキングではなく、「情緒的敏捷さ」を身につけた方が目標達成に近づく。


ハーバードの心理学者であるスーザン・デビッドによると、無理にポジティブシンキング(プラス思考)をしても幸せにはなれないそうです。それは、なぜなのでしょうか。

情動(感情)は無視されやすい

人はだれでも、ときには悲嘆にくれたり、喜びにあふれたり、怒りで震えたりします。多くの場合、私たちは小さな頃から、こうした情動を上手に扱うように教えられます。ポジティブな考えは、人に話したり、それ自体を楽しんだりして、また、ネガティブな考えは、抑圧したり、よくないことだと考えます。そうすることで、情動を上手に扱うよう教えられるのです。いずれにしても、自分の感情に深く立ち入らないようになります。

情動(感情)は最良の教師になってくれる

しかし、ハーバード大学医学大学院のスーザン・デビッド教授は、こうした情動の扱い方に対し疑問を投げかけています。同教授によると、悲しみや喜びといった内部の経験に対して、冷静な立場から、より注意を向けるべきだというのです。内的自己(インナーセルフ)には思考、感情、個人的なナラティブ(物語)が常に流れています。上手に使えば、こうした思考、感情等は、最良の教師になってくれるそうです。

喜び悲しみといった情動によって、自分が最も大切だと考えていることが分かる。そして、その価値観に基づいて行動すれば、最良の自分になることができる。デビッドによると、そうすることで回復力が高く、安定した、好奇心と勇気にあふれ、思いやり深く、共感的な自分になれるというのです。

情動(感情)を上手に処理する練習が必要

「いつもポジティブでいれば、物事はうまくいく」。自分の思考が自分の健康、幸福、現実を形づくる。このようにして思考の力を過大に評価すると、何か悪いことが起こったときには、自分が十分にポジティブでなかったからだと感じてしまいます。

しかし、人生において現実的に確かなのは、ときにはうまくいかないことがあるということです。うまくいかないときには、怒りを感じたり、悲しくなったり、悲嘆にくれたりします。こうしたいろいろな情動を処理し、上手に導き、思い悩まないようにできなければ、レジリエンス(精神的回復力)を高めることはできません。

それゆえ、こうした情動の取扱いを練習しなければいけないのです。同教授によると、幸福になることやポジティブに考えることが社会的・文化的に重視されているので、精神的回復力が阻害されているといいます。

悲しみ、罪悪感、怒りといった感情によって、自分の価値観が明らかになる。

また、悲しみ、罪悪感、悲嘆、怒りといった情動は、自分が何に価値をおいているか(価値観)を照らす光となるのだといいます。どうでもいいと思っていることに腹をたてたりしません。どうでもいいと思っていることを悲しんだり、罪悪感をもったりしません。

悲しみ、怒りといった情動を洗い流してしまうと、自分自身を知ろうとしないという選択をすることになります。自分の価値観や、自分にとって何が大切なのかを無視してしまうことになるのです。

感情を抑圧して幸せになろうとしても、うまくいかない。

最後に、「ポジティブに考えよう」、そしてネガティブな情動を追い出そうと自分に言い聞かせても、うまくいかないのだそうです。

研究によると、思考や情動(感情)を追い出すと(考えないようにしたり、感じないようにすると)、思考や情動(感情)は増幅されて戻ってくるといいます。たとえば、ある研究では、タバコを止めようとする被験者に、タバコのことを考えないようにしてもらいました。

すると、被験者は、タバコの夢を見るようになったといいます。あることを考えないようにすると、考えないようにしたことが増幅されて戻ってくるのです。ですから、情動(感情)を抑圧して幸せになろうとしても、うまくいかないのだそうです。

心から好きなことをしているときに幸せを感じる

幸福に価値をおく人、幸福になろうと努力する人、幸福それ自体を目標とする人は、長期的に見ると幸福度は低下するそうです。幸福というのは、自分にとって価値があることを追求しているときに生じる副産物であることが分かったとか。言い換えると、自分が心から好きなことをしているとき、あなたは幸せを感じるのです。「幸福」になることを目標として設定すると、かえって幸福を見つけることからは遠ざかってしまいます。

ポジティブシンキングに代わる「情緒的敏捷さ」

人は毎日、非常に多くのことを考え、感じ、経験します。自分の心の中で起こっていることに対して、勇気をもって、好奇心や思いやりを持って働きかけていくことができれば、「情緒的敏捷さ」を身につけられます。

ポジティブシンキングと回避は、思考の役割を過度に強調します。これに対して、「情緒的敏捷さ」は一連のスキルです。そして、このスキルは、ある能力を土台としています。その能力というのは、自分の情動(感情)を正面から受け止め、ラベルを貼り、理解して、意図的に前に進む選択をする能力です。たとえストレスを感じても、ストレスから抜け出て、自分の価値観に合うやり方、目標に沿うやり方で行動できるのだと分かっている。そんな能力です。

「情緒的敏捷さ」にいたる4つのステップ

スーザン・デビッド教授によると、「情緒的敏捷さ」を身につけるには4つのステップがあるそうです。

1 感情に近づく

「情緒的敏捷さ」にいたる第一歩目は、感情に近づく、あるいは感情に向き合うことです。健康的な自己を維持し、自分を見失わないようにするためには、人生は美しいと同時に、不安定で、いろいろな部分があることを理解するのが非常に大切です。ある感情に支配されて、感情と戦う必要はありません。そうした感情よりも、私たちはずっと大きな存在です。

「感情に近づく」というのは、自分の感情が正しいとか間違っているであるとか、こんな感情を持つべきではないといった自分との戦いを止めるということです。

2 距離を置く

「情緒的敏捷さ」にいたる二歩目は「距離を置く」です。マインドフルネスの実践が、これにあたります。「距離を置く」というのは、思考や感情が生じた際に、自分自身とそうした感情との間に間隔をおくということです。思考や感情が生じた場合に、いいも悪いもないし、それに基づいて行動する必要もない。そう分かっているということです。感情は自分がそう感じているにすぎません。

3 自分の価値観を思い出す

三歩目が「自分にとって大切なことに従って歩いていく」です。あなたは感情に向き合って、感情と自分との間に距離をとりました。でも、距離をとって、どんな選択をするでしょうか。何かをする前に、「自分にとって何が大切かが分かっている」あるいは「自分の価値観が分かっている」ことが必要です。自分にとって大切な信念や行動をはっきりさせてから、行動に移す。このステップは、それを言っています。

4 価値観に基づいて行動する

最後が「価値観に基づいて行動する」です。つまり、自分の価値観に沿った効果的な習慣を築きあげ、自分自身が望む目標を設定するということです。自分自身が望む目標というのは、自分の価値観に基づいた変化であり、外部から課された「しなければならない目標」ではありません。

たとえばダイエットをしようとする場合、お医者さんにしろと言われたから、あるいは今のままだと恥ずかしいからといった理由で、ダイエットをしなければと感じるかもしれません。しかし、研究が示すところでは、ダイエットしなければと感じてした場合には、一切れのケーキが違って見えてくるそうです。つまり、食べたいと気持ちが増幅されるのです。

これに対して、自分自身が望む目標は、自分にとって大切なものと結びついています。減量したいのは、健康を維持したいから、子どもの成長を見守りたいからといった理由です。そして、自分自身が望む目標をもつと、食べたいという身体的な誘惑が低下するのです。人生を実際に変えていくためには、自分の目標が自分自身の価値観に基づいていることが決定的に重要です。

感想

怒り、悲しみといったネガティブな感情は、ただ自分がそう感じているというだけ。いいも悪いもない。感情をよくないものだとして、抑圧するのではなく、自分自身の価値観を知るための光と考える。

たとえば、お金を詐欺的な手口で出費させられたら、腹が立つこともあるかもしれません。すると自分は、お金を巧妙に出費させるのは、信義に反することだと考えているのかもしれません。そうだとしたら、自分は、その価値観に基づいて行動すればいい。そんなことでしょうか。

とにかく、怒り、悲しみといったネガティブな感情を自分が持ったとしても、自分を責める必要はない。人間は、誰でも不完全で。もともとそういう性質があるそうですから。自分に悪い点があったとしても、それで自分を責める必要はない。向上する気持ちがあれば、それで十分ということでしょうか。そんな考え方につながっているような感じがしました。

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参考:「A Harvard psychologist explains why forcing positive thinking won’t make you happy」


hidenorin
翻訳者。早稲田大学商学部卒業。名城大学大学院法務研究科(法学既修者コース)2016年修了。 全国珠算教育連盟珠算検定試験1級。TOEIC940。 趣味は読書、水泳、写真撮影です。

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