アクセプタンス(現状をそのまま受容すること)とは。 その1


抵抗することの弊害

生きていると、いろいろなことがあります。受け入れがたいことも、ありますよね。受け入れがたい人も、いるかもしれません。

ひどい扱いをされたとします。反射的に怒りを感じるのは、やむを得ないことではないでしょうか。人間ですから。

しかし、されたことを何回も思い出し、長期間にわたって、こうした感情を持ち続けることはどうでしょうか。「何が悪かったのか」。「こんなことが、いつまで続くのか」。「いつも、こんな調子だ。自分には何か欠点があるのではないか」。こんな風に考えてしまうのが習慣になると、やがて自分の害になってしまうかもしれません。

ネバダ大学のスティーブン・ヘイズ教授によると、「苦しみを取り除こうとすると、かえって苦しみが増し、苦しみにとらわれて、苦しみが長期化する」。そうなってしまうのが普通だそうです。苦しみが長期化すれば、うつ病などの精神的疾患につながっていくかもしれません。また、それがストレスとなって、身体的疾患の原因になってしまうかもしれません。

受容すること(アクセプタンス)の効果

メイヨー医科大学のアミット・スード教授によると、アクセプタンス(現状をそのまま受容すること)には、抑うつの改善・不安を和らげる、生活の質・生活満足度の改善、慢性痛を和らげる、心臓関連の症状を和らげる、薬物依存を和らげるなどの効果があるそうです。

アクセプタンス(現状をそのまま受容すること)の意味

タラ・ブラック博士(Tara Brach)によれば、アクセプタンス(すへでを受容する)とは、他人や自分の有害な行為をがまんする・耐えることではありません。腹が立ったら怒っていいのです。当たり前のことですが(笑)。

アクセプタンスとは、自分の身体や心の中で起きていることに気づきながらも、コントロールしようとしたり、批判・判断したりしない、ということだそうです。「こんなことでクヨクヨしてるなんで、自分はダメだ」。そんな風に自分を批判しない。「悲しくなんかないよ」。そんな風に、自分の感情に気づかないふりをすることではありません。

抵抗しないで、悲しみや苦しみをそのまま感じることです。誰かや何かに対して、嫌だ・嫌いだ、あるいは、このようになってほしいと感じることです。そして、そのように感じることについて、そうした感情に基づいて行動することについて、自分を批判・判断しないということです。自分の中で起きていること(たとえば、苦痛、怒り・悲しみなど)に気づき、それを思いやりのある愛する心で見つめる、ということだといいます。

自分が体験したことに向き合わず、ありのままの自分や自分の感情に心を閉ざせば、怖れや分離感が増し、無価値感(自分には価値がないと感じること)を持続させることになってしまうのだそうです。

どうしたらアクセプタンス(現状の受容)ができるのか

では、どうしたらアクセプタンス(現状をそのまま受容すること)が可能になるのでしょうか。

人間の脳には、人間に進化する前の部分、つまり食べる・身を守る・子孫を残すという衝動に関連する部分があるそうです。この部分は自己中心的で非合理的。なので、人間には自制心を失いやすいという性質があり、考えることも偏向していて正確ではない。そんな側面があるといいます。

だとしたら、誰かが利己的であっても、ある程度仕方がないと思うことができます。人間には、もともとそういう性質があるということですから。金銭を目的として詐欺や殺人を犯すのも、ある程度理解ができます。

そして、自分が利己的であっても、衝動に流されやすくても、ある程度仕方がないのではないでしょうか。もともと、そういうものなのですから。

前出のアミット・スード博士は、アクセプタンス(受容)には2つの側面が必要で、逆説的だといいます。一つは、ありのままの自分を肯定するという側面です。自分は今のままで十分、今のままで完全。そう思うことです。もう一つは、さらに良くなる努力をすることに対する喜び・幸せという部分です。

「自分は今のままでいい。でも、もっと良くなることができる」。博士は、これがアクセプタンス(受容)だといいます。ただし、他人には良くなることを期待しない。他人を変えようとすることは、抵抗であり受容ではないからです。「他人を変えるのに一番よい方法は、他人を変えようとしないこと」だからです。

感想

人間は不完全で間違いを冒しやすい。それは、もともと脳の構造がそうなっているから。それが分かれば、ひどいことがあっても、もともとそんなもの、仕方がないと受容しやすくなると思います。自分の欠点も受容しやすくなりますね。

参考:
Amit Sood, M.D. 「The Mayo Clinic Handbook for Happiness」
Tara Brach, Ph.D. 「Radical Acceptance: Embrace Your Life with the Heart of Buddha」


hidenorin
翻訳者。早稲田大学商学部卒業。名城大学大学院法務研究科(法学既修者コース)2016年修了。 全国珠算教育連盟珠算検定試験1級。TOEIC940。 趣味は読書、水泳、写真撮影です。

コメントを残す